ピヤシリ湿原について

R6.5.27 ピヤシリ湿原登山口までの車両通行止めについて

ピヤシリ湿原登山口までの、奥幌内林道の崩落に伴い一時的に車両の通行を規制しています。
規制開始日時_2024年5月24日12:00
規制終了日時_未定

ピヤシリ湿原(雄武町)

 ピヤシリ湿原は、オホ-ツク海に面した紋別郡雄武(おうむ)町を南北に貫く幌内川上流の標高920メ-トルの山上に展開する山地性の湿原で、周囲は880メ-トル、面積はおよそ3.8ヘクタ-ルを有し、全域が北海道指定の自然環境保全地域になっています。この湿原のある山稜は、中川郡美深町との境界をなしており、ピヤシリ湿原は雄武町側にあります。ここから南に4キロメ-トルのところにピヤシリ岳があることから、その名をもって呼ばれるようになりました。

 道道下川雄武線の幌内越峠に林道の入口があり、幌内川沿いの林道を山間深く進むと林道の分岐点に車止めゲ-トがあり、これより先に進むには入林承認などが必要となります。ゲ-トを過ぎ誘導看板に従って山間深く林道を進むと登山口に達し、ここから約5キロメ-トルの登りで湿原に達することができます。

 ピヤシリ湿原は高原状の山稜にあり、地形はほぼ平坦で、北から北西にかけてはダケカンバの群生する小高い城壁をめぐらしたような地形をし、北東と南側は開けていて、広やかな展望を持ちます。湿原の中には3つの大きな池塘(ちとう)があり、大きいものは直径約50メ-トル、小さなものでも25メ-トルほどの大きさを有し、沼にはエゾアカガエル、エゾサンショウウオの産卵場で、この他にもエゾルリイロトンボなど数種類のトンボも生息しています。

アカエゾマツの風衝木とピヤシリ湿原

アカエゾマツの風衝木とピヤシリ湿原

ピヤシリ湿原の植生

 湿原の植生としては、ツルコケモモ、ムラサキミズコケの群落及びモウセンゴケや、ミカズキグサの群落が大きく占め、ここにワタスゲ、ミタケスゲ、ホロムイスゲ、エゾカンゾウ、タチキボウシ、ヒメシャクナゲ、ガンコウランなどが加わる典型的な山地湿原の植生です。

 池塘の周辺では、ハイマツ、チシマザサ群落にアカエゾマツが混生し、このアカエゾマツなどの林床に咲く植物の群落は、絨毯を敷きつめたかのように広がり、広やかな展望とともに素晴らしい景観を見せてくれます。

 湿原の周囲には、ハイマツ、チシマザサ群落が見られるほか、アカエゾマツが特有の景観を見せてくれます。ここではイソツツジ、ハナヒリノキ、ホロムイイチゴ、タカネナナカマド、エゾゴゼンタチバナなども見られます。

参考文献

  • 岩月善之助/伊沢正名 山と渓谷社「山渓フィールドブックス しだ、こけ」
  • 前川文夫監修 八坂書房「日本野生植物図鑑」
  • 北海道国土緑化推進委員会「北海道の森林植物図鑑-草花篇-」

湿原周辺のアカエゾマツの群落

湿原周辺のアカエゾマツの群落

池塘周辺の風景

池塘周辺の風景

イソツツジ

イソツツジ-ツツジ科-

ワタスゲ

ワタスゲ-カヤツリグサ科-

ハイマツの雄花

ハイマツの雄花-マツ科-

ハイマツ、ワタスゲ、ゼンテイカの群落

ハイマツ、ワタスゲ、ゼンテイカの群落

ピヤシリ湿原の湖沼

 泥炭地の中には「池塘(ちとう)」と呼ばれる小さな湖沼があります。ピヤシリ湿原には3つの沼があり、各沼とも、ほかの地域における池塘と同様に岸が直立しています。この池塘はくぼ地から発達することが多いとされており、沼及び湿原の水源としては、融雪、降水などを主なものとしたほか、西側斜面からの伏流(ふくりゅう)水も考えられています。各沼とも、増水時には水が湿原にあふれ出ますが、その出口は特徴的に突き出ています。

参考文献

名寄市郷土史研究会「ピヤシリ湿原の自然」

ピヤシリ湿原の池塘1

ピヤシリ湿原の池塘2

ピヤシリ湿原の池塘3

ピヤシリ湿原の地質

 ピヤシリ湿原は、泥炭(でいたん)地の表面が泥炭層の基盤地形とは無関係に、ドーム状または時計皿状に盛り上がってできています。泥炭とは、低温多湿の状態で、なおかつ地下水位が高いと、ミズコケなどの枯れた植物は酸素が足りずに、完全に分解されない状態で積み重なり、泥炭(層)が生成されます。できた泥炭が、水面より高く盛り上がっている湿原を「高層湿原」、水面の下になっているものを「低層湿原」といいます。

 泥炭の元でもあるミズコケは、貧栄養(ひんえいよう)性の生育環境を好み、泥炭地の中央部は富栄養(ふえいよう)性の水の影響を受けにくいためミズコケの立地に都合がよく、ピヤシリ湿原でもミズコケの群落が確認されています。ピヤシリ湿原の泥炭層の層厚は1メ-トル前後で、泥炭層の大部分は水を含んだ繊維質で、下層にいくほど繊維質の分解は進んでいます。また、泥炭層の最下部には、厚さ15センチメ-トルほどの青灰色の粘土質の泥があって、これが湿原の水が地下に浸透していくのを防ぐ役割を果たしています。

参考文献

名寄市郷土史研究会「ピヤシリ湿原の自然」

ド-ム状または時計皿状に盛り上がった泥炭層

ド-ム状または時計皿状に盛り上がった泥炭層

アクセスなど

フィールド紹介

標高920mの山上に展開する山地性の湿原で、周囲880m、面積は3.8haを有し、低地と高層の高山植物群落は絨毯を敷きつめたかのように広がる。

所在地

北海道紋別郡雄武町字奥幌内

アクセス

車を利用。道道下川雄武線の幌内越峠に奥幌内林道があり、そこが入口となる。林道を山間深く進むと林道の分岐点に車止めゲ-トがあり、これより先は入林承認などが必要となる。ゲ-トから約4km走行した地点に登山口があり、ここから約5kmの登りでピヤシリ湿原に達する。(入林に関する問い合わせは管理課管理係まで)

施設

誘導看板、登山道にキロポスト設置

地図

ピヤシリ湿原の地図

詳細地図

ピヤシリ湿原の詳細地図

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