東部耕地出張所の取り組み:どじょうをどうしよう
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「どじょうをどうしよう - ドジョウ引っ越し作戦」 の概要
大空町の女満別豊住地域には湿地帯が広がり田んぼの横の小川(排水路)にはエゾホトケドジョウをはじめ、フクドジョウ、ドジョウの三種類のドジョウのほか、ヤチウグイ、トゲウオなどが住んでいます。 その中でもエゾホトケドジョウは、絶滅危惧種となっています。
網走支庁東部耕地出張所では、今回この地域で排水路の整備をする事となり、エゾホトケドジョウを始めとする排水路に住む魚たちを、工事する前に安全なところまで引っ越しさせる事としました。
またこの工事では、整備後、ドジョウや魚たちが帰ってきて暮らせるよう、住み家や産卵場所などを設け、生き物を守る取り組みをしています。
平成18年度より、地域小学校の生徒たちと一緒に魚たちの引っ越しを手伝ってもらい、自分たちの住んでいる地域環境についての勉強も合わせて行っています。 |
多くの方々のご協力のもと、昨年排水路工事も無事完成しました。
これで、排水路は法面の崩壊や通水断面の阻害が解消されると共に、生息していた魚類等の新しい住み家として機能を始めました。
しかし、平成18年度から3年間、工事から生き物を守るため、豊住小学校の子供達とドジョウの引っ越しを行ってきましたが、この排水路に本当にドジョウや他の生き物は帰って来るのでしょうか?
今年は、工事後にどれほどの魚類が戻って来ているか生息調査を行いました。
まずは、工事前と工事後の排水路断面についておさらいです。
工事前
工事後
土水路であった時の魚類が生息していた環境や機能を再現した断面となっています。
さて、ドジョウや他の生き物は戻ってきているのでしょうか・・・
調査結果は以下のとおりとなりました。
配慮工法 |
当初に期待された効果 |
環境調査結果及び評価 |
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コンクリート2面柵渠
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・底面の土層を保全することにより、深みなどが形成されやすい。 ・ドジョウやマルタニシなどは泥底に含まれる有機物や藻類を餌とし、泥底に潜って越冬する。 ・水生植物の生育を促し、植生の早期回復が期待される。 ・水生植物が生育することにより、ヤチウグイ、エゾホトジョウ、トミヨなどの産卵場、採餌場、幼魚・稚魚の生育場となる。 |
・事前調査と比較して、同等以上の生息種、個体数が確認されており、工事の進捗や工事の完了に左右されることなく、魚介類の生息環境は良好に保全・創出されていた。 ・底面の土層からはヤナギモを主体として、ウキクサ、クサヨシ、サジオモダカ、ヒルムシロ属、ミクリ属などの水生植物が早期に回復していた。 ・コンクリート柵板には、マルタニシやモノアラガイが付着し生息していた。 |
側面の パイプループ
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・コンクリート柵渠の側面下部にパイプループ(硬質塩ビ管φ150mm)を千鳥に配置した。 ・工事直後の植生の乏しい時期の隠れ家となる。 ・鳥類などの外敵や増水からの避難場所となる。 |
・パイプループ内にはドジョウ、エゾホトケドジョウ、トミヨ、マルタニシ、モノアラガイなどが生息しており、隠れ家として機能していた。 ・1箇所で10尾以上が確認された箇所もあった。 |
底面の詰石 |
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・落口工の設置箇所に敷砂利(80mm級)を施した。 ・ウグイやフクドジョウなどの礫床に生息環境を依存する魚類の産卵場としての利用が期待されるほか、落口部の底面保護を兼ねている。 |
・本排水路の利用形態(水稲栽培による水量管理)から、魚類の産卵場としては不適な環境である。 ・コンクリート板で底面を保護するよりも、敷砂利を施した方が、ヤナギモなどの水生植物の植生基盤となり、生物多様性に寄与している。 |
底面の深み |
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・底面に鉄筋コンクリート管(φ300mm L=20cm)を約100m間隔で千鳥に配置した。 ・渇水時の生息場所となる。 ・鳥類などの外敵や増水からの避難場所となる。 ・管内に有機質な泥が溜まり、ドジョウやマルタニシなどの餌場となる。 |
・底面の深みは堆積物で埋没しており、魚介類の生息は確認されなかった。 ・深みの中には有機質な泥が溜まっており、ドジョウやマルタニシなどの餌場や渇水時及び越冬時の生息場として機能していると考えられる。 |
No1地点採捕状況:ヤチウグイ、ウグイ、ジュズカケハゼ、マルタニシ、トミヨ、ドジョウ、フクドジョウ、エゾホトケドジョウ、モノアラガイ |
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過去と比較して、同等以上の生息種、個体数が確認され、改修工事の進捗や工事の完了に大きく左右されることなく、魚介類の生息環境は良好に保全・創出されていたことが確認できました。
また、ヤナギモを主体として多種多様な水生植物が早期に回復し始めています。
これは重要種に指定さているヤチウグイやエゾホトケドジョウ、マルタニシなどの産卵場や採餌場、幼魚・稚魚の生育場として良好な環境を形成していると想定されます。
よって今回実施した工法は、概ね当初の期待された効果を上げていると判断できますが、まだ工事が完了して1年目と経過年数が浅いため、今後どのような影響がでるのか経年変化を注意深く見ていくことが大事です。
豊住小学校の子供たちが大人になり、次の世代、その先までこの排水路にドジョウや他の生物がいつまでも生息できる環境が続くよう願って、平成21年度に実施した調査報告とさせていただきます。
なお、平成21年度の豊住小学校児童との体験学習は、大空町豊里・住吉両保全組合が主催する「豊住用水路探検隊」の一環として行っていますので、こちらもどうぞご覧ください。
「豊住用水路探検隊」へのリンク